零戦の復元に向かって

はじめに 第一部 第二部(1) 第二部(2) 第二部(3) 第二部(4) 第二部(5) 第二部(6) 第三部 第四部 あとがき

第四部 問題の飛行機:アントノフ:

  :呆れたサンダル:じゃ無かった、:あれつ?糞:じゃ無かった、アレックス が、アントノフの話を仕掛けて来たのは、平成7年の  月です。
旧ソビエト連邦が崩壊して、共存圏諸国が経済危機の大混乱に陥ったのです。 この共産圏諸国の中のチェコ(旧チェコスロバキアで、現在はチェコと、スロバキアに分離独立している。)に、マリアンス・クリーゼンと言う町が有ります。ドイツとの国境で、フランクフルトに極近い町です。

 この、マリアンスク・リーゼンの小さな飛行場で、問題の飛行機アントノフが売りに出たのです。連邦崩壊で、経済混乱の煽りを受けた結果で、かなりの安価だったのです。
日本では、とても考えられない程の価格なのです。
国境の反対側の町に、:あれっ?糞:が住んで居ます。:あれっ?糞:の会社は、フランクフルトに有り、ヘリコプター(最新型のヒューズ社のノーター)と、セスナの210を所有しているそうです。
:あれっ?糞:は、この会社のお抱えパイロットをしているのです。
フランクフルト空港の駐機料が高いのと、フランクフルトへの通勤が便利で、駐機料が安いので、このマリアンスクの飛行場に、セスナの210を置いて有るとの事だった。 
ここで、国境の事を一寸・・・

 日本には、国境が陸上には無いので、理解し難いのですが、此処では国境が陸上、つまり地続きなのです。だから、他国への行き来が日常茶飯事なのです。 パスポートを持っていて、通行?通関?手数料を払えば、意図も簡単に通行できます。勿論、一回の越境でドイツと、チェコの二カ所を通過しなければなりません。料金もドイツとチェコでは違います。
それで、:あれっ?糞:が会社に出勤する時は、自分の車で国境を越えてマリアンスクへ行き、飛行場で出国の手続きをして(小さなプライベートの飛行場なので、電話をして係官に飛行場に来て貰う)、セスナで空から国境を越えて、フランクフルトの空港へ着き、そこで帰国の手続きをして、会社へ出勤するのです。
文章に書くと、大変に思えますが、これだけ諸々の事を向こうでは、書類にサインだけで、いとも簡単にすんでしまうのです。

 これが日本だったら、手続きが面倒で、その上時間がもの凄く掛かってしまい、日帰りなんて事は、とても出来ない事でしょう。 
日本の国も、役人も、是非見習って欲しいものです。
こんな環境なので、アントノフの話が:あれっ?糞:の耳に入り、早速大将に連絡が行って、アントノフは:大将プラス貧乏な人達:の共同所有と成る道筋が、付いてしまったのです。
突然大将から電話で「アントノフを買っちゃったから、アレックスの口座へ、マルクで□□□□マルク振り込んでくれ。俺は金がねーんだ。」
「バッカヤロー!俺だって金がねーんだ。大怪我して退院したばっかりなんだ よ。お金を一杯使ったんだっつーのー。遊んでる余裕なんかねーんだよー!」って言いたかったけど、言えなかった。
生命保険の金が、幾らか降りたのと、自分の臍繰りを加えて:あれっ?糞:の口座へ振り込んで、取り敢えずアントノは、:大将プラス貧乏な人達:の所有と成りました。(書類の上です。)

 マリアンスクの飛行場では、アントノフの整備が始まった様でした。整備済みの条件で買ったのですから。
何日かが過ぎて、:あれっ?糞:から「そろそろ、アントノフが飛べる状態迄に整備が進んだ。」と連絡が、大将に有ったらしい。
「アントノフの仕上がり状態を見ながら、慣熟飛行に行こう。」と、大将から俺に電話が入った。
又々大将は、簡単に言うが、何しろ私はチェコと言う国を良く知りません。
増して、私は大怪我をして、退院して間もないのです。只今リハビリの真っ最中なのです。
歩行も、ままならないのに、階段の上り下り、その上空港の広いコンコースを、荷物を持って歩く事なんて、考えただけでうんざり・・・行ける訳がありません。
勿論、返事は:ノー!:
大将「何言ってんだよ!お前が金払ったんだろー。所有者が行かないでどうするんだ。鞄持ちと、杖代わりを連れて行くから大丈夫だよ。」と言う。
と?言う事は、アメリカ経由でドイツのフランクフルト・・・そこからは、:あれっ?糞:のセスナで、チェコのマリアンスクへ行くとのルートの様だった。
その時、大将の家には、:イワンの子馬鹿:と言う生徒が、居候していたのでした。そうそう、:イワンの子馬鹿:の話をしなくっちゃー・・・:イワシの小骨:じゃ有りませんよー。
:イワシの小骨:じゃなかった、:イワンの子馬鹿:だった。

 その前に一言、お先にお詫びの言葉を言って置く事が有ります。
私の表現の仕方が、今までにも、これからも、人を傷つける様な大変不適切な事でお怒りの方が居りましょうが、私達:下手物集団:?仲間の一人との意識を持って頂いてその上、私の馬鹿さかげんと、大将と関わったのが運命と諦めてください。

 :イワンの子馬鹿:の親父と言う人が、素晴らしいキャラクターの持ち主なのです。
前にも、見た目で人を判断して、私が大きな失敗をした事を書きましたが、:イワンの子馬鹿:の親父・・・失礼、松山さんと言います。・・・の時もそうなのです。
土佐の高知の高知市に住んでいます。
松山氏は、物事に対する取り組みと言うか?捉え方と言うか?先を読むと言うか?兎に角、お金儲けの方法を知っているのです。
それは、人の裏を掻くとか、人を欺くなんて事では有りません。人が気づかない金儲けに対する閃きと、アイデアを見つけ、それをお金儲けに結びつけるらしいのです。
この人が、どう贔屓目に見ても、そんなにお金儲けに長けて居るとは、思えない雰囲気なのです。ここに、私の目の誤りが有るのです。
一寸せっかちな所が有りますが・・・おっとり型と言うか?(まるで正反対)抜けてると言うか?・・・失礼!見た目だけでーす。
「大将も、見習えよー!貴方の似ている所は、人の裏など掻かない事と、人を欺く事はしない事だけです。足りないのは、お金儲けの事ですよーん!」
松山氏は、以前大将の所へ、ヘリのライセンスを取得する為に行ったんだそうです。
トレーニングの途中で、彼の奥さんから、金儲けの仕事が入ったと連絡が有ったそうです。
途端に、彼はトレーニングを投げ出して、日本へ帰ってしまったと言う、甚だお金儲けに長けた、ユニークなキャラクターの持ち主なので有ります。
勿論、これは奥様の内助の功で有った事は言う迄もなーい!
この一件の結果、誰が付けたかは、想像出来ますが・・・金儲けばっかり・・・金儲け馬鹿・・・金馬鹿・・・カネボケ・・・迄は解るが?
何処でどう変わってしまったのか?:松山イワン:になってしまった。
後で解ったことですが、金儲けの事は、誰にも教えない・・・言わない・つまりイワン、これが:松山イワン:になったと言うのが、本当の事だそうです。
それで、松山氏の倅・誠二君こと・せいちゃんは、:松山イワン:の子供なので、誇り高い:イワンの子馬鹿:の称号を拝命いたしましたとさー。
めでたし!・・・めでたし!・・・

 なんで、私の書き方って・・・あっちへよろよろ!・・・こっちへよろよろ!・・・になってしまうんでしょーっ!自分ながら定まりましぇーん!
そんな訳で、鞄持ちと、杖代わりには、:イワン:ちゃんが、なってくれると言う事で、とうとう大将に押し切られてしまい、マリアンスクに行く事になってしまいました。
改めて、メンバーは、:紅の豚:おっと失礼・大将、:狸ちゃん:・・・:イワンの子馬鹿:・・・そして、身体障害者になってしまった:髭ゴジラ:・・・。
しかし、ビッコを引いて歩く:髭ゴジラ:ってのは、全然様になんないねー!
それにしても、変な組み合わせですよー!どう見ても・・・

 又々、:狸ちゃん:と東京で落ち合って、荷物をサポートして貰い、大将の家へ向かいました。
それにしても、成田とロス間の11時間は、身体障害者の私にとっては、相当我慢の連続でした。
何しろ、背骨が一本クラッシュしてしまったのですから、座ったままの11時間の辛さは、本人以外には理解出来ないでしょう。
上半身の体重が、クラッシュして、完全に再生してない背骨に、まともにのしかかって居るのです。只々忍耐の拷問でした。

 流石に、ロスの空港に着いたら、へとへとに疲れてしまいました。
こんな身体で、チェコ迄行けるんだろうか?自信を失いそうでした。
大将の家へ着いたら、:イワン:ちゃんが居候して居りました。     
その夜は、大将の家で時差惚けそのままに、早速宴会です。
大将の家に4日程滞在して、その間チェコ行きの航空チケットを購入た。
(ロスで買った方が日本で買うよりも遙かに安いのです。)
それでも、6月になってしまったので割高になって仕舞った。と言うのは、ヨーロッパは6月が観光シーズンになる為なのです。
ロスの空港から、東周りでドイツのフランクフルトへ出発です。
又背中に辛い、??時間のフライトです。

 フランクフルトの空港でセキュリテーチェックが有りました。ドイツでのチェックは日本の赤軍派の影響が今でも続いていて、日本人と言うだけで、相当厳しいのです。増して、四人共、誰の目にも怪しい雰囲気です。
金属探知器で、俺の身体を撫で回します。当然私の身体には、金損が埋め込んで有るのですから、ピースカ、ピースカ鳴るは、鳴るは、・・・
ガードマンだけじゃ無く、周囲の人達迄が、俺をジローリ見るのです。
俺の身体には、怪我をしたので金属で三カ所固定してあるのだと説明しても、納得してくれません。
運悪くこのガードマンが東南アジアからの雇い人だったのです。俺の下手な英語の上に、こいつの発音が俺には解り難いのです。大将に助けを求めても、仲間で何か企んでると思って用心深いのです。大将を寄せつけません。あくまでも本人に説明させる積もりです。
余程裸になって、傷口を見せようかと思った。しかし、どうして俺は他人に裸を見られる運命に有るんでしょう?裸のヒロイン・・・
どうにか、金属探知器を潜り抜けて、ロビーに出ようとしたら、又、大将が呼び止められた。
何か?と思ったらメッセージが入って居るとの事だった。
メッセージは、迎えに来ている筈の:あれっ?糞:からだった。      
「フランクフルトの空港に付いたら、電話をくれ」とのメッセージだった。
大将が、:あれっ?糞:に電話をしたら、「マリアンスクが霧で飛行機が飛べないので、迎えにいけない。」チェコとの国境に近い:あれっ糞:の住んでる、何とか駅迄、電車で来てくれとの事だった。
その駅迄:あれっ?糞:が迎えに来ていて、其処から、:あれっ?糞:の車で、越境してマリアンスクに行く事になった。

 何もかも初めての私は、興味津々で周囲を見回した。
それにしても、空港の広いコンコースを歩いて、電車の駅迄行くのは普通の身体の人でも楽ではないのに、身障者の私に取っては、:イワン:ちゃんに荷物を持って貰っても、相当の重労働であった。
大将が、車椅子を借りるか?と言ってくれたが、車椅子にはどうしても頼りたくなかった。痛い足を引きずって、どうにか電車の駅迄頑張ってしまった。
飛行機の中で座って居るのも辛かったが、広いコンコースを歩くのは、その数倍も辛かった。
電車に乗って、何とか駅に向かった。矢っ張り歩く辛さよりは、座っている辛さの方が遙かに楽だ。
電車が走り出して暫くしたら、車掌が検札に来た。この車掌が:所ジョージ:そっくり・・・思わずカメラを出して、取らせてくれと英語で言ってしまった。 そうだ此処はドイツだったと気づいた、しかしこの車掌、意味が解ったらしく、ポーズをとりやんのー!「とっころさん!はいチーズ!」パチリ・・・
そんな、楽しい事があって、:あれっ?糞:指定の何とか?駅に着いた。

 :あれっ?糞:らしき奴が迎えてくれた。大将、何時までも俺を紹介しない。
話には聞いて居たが、:あれっ?糞:との出会いがこの時初めてだった。
そこで、勝手に「ハーイ、アレックス、ナイストウミーチュユー」
「ハーイ、サトウ、ナイストウミーチュユー、トー」
大将、側でキョトンとして、「二人共、初めてだったの?」だって。
大将は、二人共とっくに知っているものと思ってたらしい。
:狸ちゃん:は、大将の家で、とっくに面会して居たらしい。
:あれっ?糞:は、上手な日本語で、「ハーイ、タヌキー!」だって。:狸ちゃん:の本名を知らないらしい。
早速、:あれっ?糞:の車で、国境へ向かい、前に書いた様な手続きを踏んで、国境を越えて、マリアンスクへ行きました。

 マリアンスクの町へ着いて、:あれっ?糞:のお勧めのホテルにチェックインしました。
この町は、観光で成り立っているらしいのです。だから、通りに面してホテル
が何軒も軒を並べています。私が見た限りでは、落ち着いた小綺麗な町です。 
温泉が湧き出て居るらしく、ヨーロッパのお金持ち達が保養に来るとの事でした。
部屋に落ち着いて、ベッドに仰向けに寝たら背骨がギシギシと音がして、すーっと楽になりました。そのまま、何時の間にか眠ってしまいました。
目を覚ましたら、疲れが取れて大分楽になった。窓を開いて通りを見下ろして居たら、目の前をトロリーバスが通り過ぎて行きます。
日本では、随分前に全て姿を消して仕舞って、見る事が出来ません。
30年程前、私が池袋に住んでいた頃見たのが最後でした。懐かしい思いに浸って眺めていました。
その路面を見ると石畳のダラダラ坂なのです。とてもメルヘンチックな雰囲気です。それと、路上には塵が見あたらないのです。日本とは大違いに清潔に感じられました。
日本のポイ捨ては、どうにかならないのでしょうかねー。

 :あれっ?糞:は、私が眠って居る間にドイツ帰って仕舞ったそうで、明日の朝、迎えに来るとの事だったのです。
腹が減ったので、ホテルのレストランに行った。テーブルに四人が座ると、メニューを持ったウエイトレスが来て何か言った。四人共何を言ってるのか、まるで解りません。ウエイトレスは、勝手にメニューを置いて行って仕舞った。
ウエイトレスと目線が逢ったので、手招きしたらテーブルに来てくれた。
メニューを開いて見たが、書いて有る字はちんぷんかんぷん!
メニューの中の数字の一番大きい順に、四品頼めば、その中の一つ位は口に合う食い物が有るかもと、何ともアバウトなオーダーをしてしまった。 
飲み物は、ゼスチャーでビールとワインがどうにか通じた。摘みにチーズとソーセージが欲しいので、絵を書いて見せたら、笑いながら納得させる事に成功した。
ビールは、生の黒ビールだった。味は酷が有って、なかなかの美味さだったが、俺は矢っ張りキリンのラガーの方が美味いと思った。
チーズとソーセージは、流石に酪農の国なので、美味かった。
翌朝、部屋の電話が鳴った。アレックスが迎えに来て居て、ロビーで待って居るとの事だった。
準備をしてロビーに降り、早速マリアンスクの飛行場にアレックスの車で行った。
飛行場のスタッフに紹介されたが、言葉が解らないので適当に挨拶して終わってしまった。

 いよいよ主役の登場、問題の飛行機・・・アントノフに御面会です。
飛行場のハンガー(格納庫)を覗き込んだ。こんなに大きい単発のレシプロ機、しかも複葉機、見上げて唖然としてしまった。
最近の、ジェットエンジンの大出力を備えた飛行機だったら解りますが、ピストンエンジンで、これでけの大きな機体を空に浮かべるには、相当なエンジンでなければなりません
エンジンは、零戦と同じ星形です、違いはアントノフは単列9気筒1000馬力・・・方や、零戦は並列14気筒1200馬力です。

 一寸話が反れますが、零戦は、アントノフよりも遥かに小さい身体に1200馬力だったのです。その上運動性が並外れて良かったのですから、あの当時では零戦に勝てる飛行機が有りませんでした。当時の日本の航空技術が、いかに優れて居たかが解ります。
飛行機に乗り込み、コックピットに座って見た。計器が一杯着いて居るが、配置は概ね欧州の飛行機と替わらないだろうと眺め回した。しかし、プラカードの文字が読めません。
ロシア語なのか?チェコ語なのか?・・・ただ、どうにか解ったのは、エアースピードメーターがkmでエンジンのタコメーターはRPM、プレッシャーゲージがkg/cmだ。しかし油圧なのか?空気圧なのか?:わっかりましぇーん!  ADFは酷い物で、どうやら電子回路は真空管式の物の様です。今の時代に真空管とは、驚いて仕舞った。秋葉原に行っても余程ジャンク屋を探さないと見つけられません。 
多分、このADFは動作しないでしょう。
もっと驚いたのは、飛行機に取っては最も大切な計器の一つの航法計器で、ADFよりももっと大事なマグネットコンパスです。
日本では、その辺のホームセンターで売っている玩具の様な、ちゃちなコンパスが、パイロット席とコパイロット席の真ん中に付いてるのです。
これでは、ナビゲーションフライトは出来ないでしょう。勿論此処ではローカルフライト用に使用している機体なのでしょうが?
地上に有るアントノフを、ざっと見ただけでこんなもんですから、飛んだ時はどうなんのかなー?考えこんで仕舞いました。
その他、初めて見る様な計器の他にも操作スイッチが有ります。 実際に、私達だけで飛ぶ事になれば、全ての物に英語か日本語のプラカードを張り付ける事になるでしょう。      
ハンガーの中には、農薬散布用のズリン(欧州では結構有名な、チェコの飛行機メーカーです。)が、5機程と、アクロバット用のズリンが一機、その他日本ではウルトラライト規格の機体が、チェコの登録番号を付けて3機程入っていました。多分チェコでは、ノーマル扱いになって居るのでしょう。 
ハンガーを一通り眺めて、屋外を眺めて見ると、屋外駐機場にアントノフが2機と、農薬散布のズリンが3機と、訳の解らないスクラップ寸前の機体が5〜6機列んでいた。

 事務所の前に、屋外のカフェテリアがオープンしていた。4匹プラス:あれっ?糞:が空いてるテーブルに座った。
「喉が乾いた。何か飲みたい。」と言ったら、:あれっ?糞:が売店の中に勝手に入って行って、冷えた瓶を五本持って来た。
「サトー・ト:カズ:(アレックスは大将をカズと呼びます。)ハ、ビールOK・・・タヌーキ、アンドユーモOK?」結構上手い日本語を使います。
:あれっ?糞:は、しっかり俺のリクエストを聞いていてくれたんだ。
俺は、栓を抜くのももどかしく、一気にラッパ飲みに半分位飲んだ。
「ふうー!こりゃー美味めーやー!」ホテルで飲んだ時は、疲れて居たのだろう、これほどの味は感じ無かった。残りも一気に飲みは干した。
:あれっ?糞:・呆れた顔で俺を見つめて居た。
もう一本の瓶に手を掛けて気が付いた。頭が:くらっ:とする。「時差惚けで調子が悪いのかなー?」
もう一本に口を付けて一口飲んだ。「矢っ張りうめー!」          :狸ちゃん:二口飲んで、瓶に貼って有るラベルを眺めて居る。「:狸ちゃん:よー、貴方チェコ語解んーの?」「解んないけどねー、何んか数字が書いて有るんだよ、もしかして、この12何とか?って書いて有んのは、アルコールの度数じゃ無いかなー。」
「本当だ。アラビア数字は、世界共通なんだー?」
12何とか?と言うのは:狸ちゃん:が言う通り、アルコールの度数の様だった。俺の体調がおかしい訳では無かった。「良かったー。」
飲み終わった途端に、:あれっ?糞:が手を出す。
「ん?何だこい奴・:せっせっせー:でもやる積もりかー?」「ドイツ人が:せっせっせー:を知って居る訳が無いじゃーん。」
「こい奴めー!ビールは:あれっ?糞:の奢りかと思ったら、しっかりしてやんのー!」
ビールの代金を徴収する積もりらしい、「俺達はゲストだろー?お前奢れよー!」・・・この辺がドイツ人気質らしい。
俺と大将は、チェコの小銭を持って居なかったので、この時は:イワンちゃん:が払った。
大将が、幾らか?って聞いたら、:イワンちゃん:・んー????
計算には滅法弱いらしい。暫く考えても答えが帰って来ません。
このままだと、大将の御小言が飛びそうです。気を効かせた:タヌちゃん:が早速電卓で計算した。
なんと、ビール一本が日本円換算で約75円、日本の中瓶位の大きさなのです。
:がめつく:アルコールの度数を計算に入れれば、日本のビールはアルコールが6度位なので、約32円50銭の計算になります。
酒に御縁の多い四匹マイナス一匹(イワンちゃんは、未成年なのでこのメンバーに入れる事は出来ません。)には、欠かす事が出来ない計算?価格?の確認なのです。
つまり、幾らの持ち合わせが有れば、どの程度迄は飲めるか?と言う本当に、飲んべえの意地汚さが身に付いて居るのです。
こんな異国の地に来ても染みついたものは、離れません。本当に困った:馬鹿物:達です。
それにしても酔いが早い訳です。日本酒の四合瓶を一気飲みしたのですから・・・:あれっ?糞:が呆れた顔で眺めて居た訳が解りました。

 大将が、マリアンスクのアントノフの売り主と:あれっ?糞:を交えて、可成り苛立ちながら話して居た。
何しろ、向こうの言ってる事はチェコ語、此方は日本語、しかし大将は英語が解る、:あれっ?糞:は英語とドイツ語とチェコ語が解る。
「読んでる貴方、わかるー?」「書いてる私は、解っかりましぇーん!」
つまり、こう言う事になります。向こうの言う事はチェコ語、それを:あれっ?糞:がチェコ語をドイツ語で理解して、英語で大将に通訳する。それを大将が日本語で理解する。
それでも、大将は英語と日本語・・・:あれっ?糞:は英語とドイツ語を理解出来る人だったから良かったのでしょう。
もう少し解り易く書いて見ますとこうなります。
向こうが話してる時・・・チェコ語→ドイツ語→英語→←英語→日本語
此方が話してる時・・・日本語→英語→←英語→ドイツ語→チェコ語
こんな、複雑な会話に私達が混ざったらどうなる事でしょう?
これが原因で、大将が苛立ちながら話してるのかと思ったら、話の内容は違って居たのでした。
これから直ぐにでも、アントノフに乗れると思って居たら、飛行機は未だ整備が完了して居ないと言う。

 大将が、:あれっ?糞:に何か強い言葉で言っていた。確認しないで連絡した事を攻めてるらしい。
何かの部品に手配が付かず、飛べる迄には、二、三日以上掛かるらしい。
飛行場で夕方迄、適当に時間潰しをして、早めにホテルに戻った。
:あれっ?糞:は、彼女の事が気懸かりで、いそいそと早めに帰ってしまった。
:あれっ?糞:は、只今、彼女との関係が、:累卵の危機:の真っただ中なのです。変な:下手物四匹:に、まともに付き合ってる場合では無いのです。 
「彼女を取るか?:下手物:と付き合うか?」と言えば、当然:下手物:達でーす。
そうです。:あれっ?糞:は、並の人間だったのです。
「おい、おーい!んーな訳ねーだろー!」
「弱っかすの、アレックスだぜー、彼女を取るのに決まってんだろー!」 
本当にこの時のアレックスは、彼女との関係が危かったのです。此処で、気前の良い?:下手物:がごねたら、今のアレックスと彼女は無かった事でしょう。 メデタシ!メデタシ!

 そんな訳で:あれっ?糞:は、俺達に、何の未練も残さずに彼女の元へ馳せ参じたのです。 
今晩もそんな訳で、変な:三匹:の夕食は、訳の解んなメインデッシュに、超美味いビールと、つまみはチーズとフランクフルトソーセージになりました。
どうも、ビールでは腹が脹れてなりません。多分こんな国ですので、ウイスキーをオーダーしたら値段が高いだろうと、結構飲みながらお金の事を心配をしていたのです。
「お金が無ければ、飲まなきゃ良いのにー」・・・飲んべーはどうしても夕闇の中に、赤い灯青い灯が灯って来ると、口が寂しくなって仕舞うのです。
下戸のお方には、飲んべーとは理解に苦しむ不思議な動物に見えるものです。
:髭ゴジラ:が、どうしてもウイスキーか焼酎を飲みたいと言い出した。その時、:狸ちゃん:が思い出してくれた。
「以前、チェコスロバキア(チェコとスロバキアに分離してない頃)に来た時に、地酒の焼酎を飲んだ事がある。名前は何て言ったけなー?」
 一口ビールを飲んだら、名前を思い出した。
口の泡を拭いながら、「ボロビチカ!ボロビチカ!」「結構美味いんですよー。」
ウエイトレスを手招きで呼んだ。今度ばかりは、ゼスチャー要らずです。:狸ちゃん:得意気に、「ボロビチカ」と言った。
ウエイトレス・:狸ちゃん:にニッコリ微笑んで「デクー」!:狸ちゃん:も「デクー」(有り難う)・・・:狸ちゃん:お礼の言葉迄も思いだして仕舞った。
焼酎と言うから、ボトルが来るかと思ったら、小さいグラスにダブルの量しか入っていない。
それも:狸ちゃん:の一つだけ・・・そうかー、微笑んで「デクー」と言えば、俺のボロビチカも来るかもねー。
しかし、俺の微笑みで通用するかなー?それとも、気味悪がって逃げて行くかもねー?
多分後者の方でしょう・・・「:髭ゴジラ:って謙虚だねー!」
四個のグラスがテーブルに並んだ。改めて「乾杯!」
「改めて乾杯もねーだろー?」「毎晩、毎晩乾杯してんのにー!」
一口含んで、:ヒエー!:喉が焼けそー・・・強いの・何のってー。度数が60何度だってー。
試しに、マッチを摺って近付けたらボー・・・青白い炎が立ち上がった。
勿論、:イワンちゃん:は、飲めませんでしだ。
まるで、アブサンかテキーラを飲んだみたい。 
このボロビチカ、強いのは確かでした。そして美味いのも確かでした。
その夜の四匹は、めろめろに酔って仕舞い、翌日の昼前迄グロッキーでした。

 午後から飛行場へ行ったが、アントノフには特に進展が有りません。一日無駄に過ごしました。
翌日、大将がアントノフの売り主と交渉して、飛べる状態に有る別のアントノフに乗る事になりました。
ハンガーからアントノフを引き出して、プリフライトチェックをし、燃料を入れた。
パイロット席には、此処のパイロットが座り、コパイロット席に大将が座った。 パイロットが幾らか英語が出来る様で、大将に何やら説明していた。メインスイッチを入れたらしく、何やら音がする。別のスイッチを入れたら、モーターが回る音が聞こえて来た。次にレバーの様な物を引いた。
ぼこっ・ぼこっ・ぼこっ・ぶほー・ぼこっ・ぶほー・どっ・どっ・どーん!
エンジンが掛かった。
モーターでフライホイールを回して、クラッチを繋いでエンジンを掛けるのだった。
確かに、こんなでっかいエンジンは、セルモーターが余程馬力が無くては掛かりません。「そうかー、こんなにして掛けるのかー」
そのままタキシングして、滑走路へ・・・んんんんー?滑走路が無いー。何処を見回しても其れらしい物は見えません。一面牧草の様な草原です。

 そのままエンジンのパワーが入った。左右にローリングしながら50M位走ったら、すうーっと機体が浮いた。まっさかー?本当に浮いたのです。こんな図体のでかい飛行機が、こんなスピードで浮くなんて!そのまま上昇、レベルフライトへ。
俺の感では、今のレベルフライトのスピードは、約60マイル位かなー?
そのままのスピードで左右旋回、上昇、下降、スティプターン。
まるで、ウルトラライトの飛行機に乗ってる感じのスピードです。セスナよりも遅いスピードでマニューバーをやって居るのです。失速しません。
大将が替わってマニューバーを始めました。全く同じです。座席を大将と替わって、他の:三匹:も操縦してみました。
俺の感じでは、各舵が全て重かったのでした。特にラダーペダルは、右足が不自由な俺には、重すぎました。
実際には、ソロで飛んで見ないと感じは掴めません。しかし、ゆっくり飛べる事は確かです。
操縦を替わって、上から眺めた景色は、映画に出てくるヨーロッパの田園風景そのままです。
6月のヨーロッパとは良く聞いていましたが、春、真っ盛りです。あちこちに街並みが点在していて、その他は、全て畑です。その畑が今は、真黄色の菜の花です。
のんびりと牛が草を食べていて、その側にはため池が有ります。
「メルヘンの世界って、こんな感じなのかなー」:髭ゴジラ:は柄にもなくロマンの世界に浸っていました。
一瞬、一面菜の花の黄色に埋め尽くされて、自分が飛び揚がった飛行場を見失って仕舞いました。
こんな景色の良い所には、胡散臭い:下手物:達と来るべきでは無く、良い女と良い男二人切りで来たいものです。折角の景色を:下手物達:が占領しては、罰が当たります。
最後は、大将に替わりそのまま草原の飛行場へ、此処のパイロットの指示で大将がランデングしました。
ランデング距離は、離陸の2/3位の距離で、まるで鳥が降り立つ様な華麗なランデングでした。大将は大体の感じを掴んだ様でした。

 :あれっ?糞:にホテルへ送って貰い、その晩は:あれっ?糞:も一緒に飲む事に成りました。どうやら、彼女とは上手く行ったらしい?顔色が違います。
今晩のメニューは安心出来そうです。:あれっ?糞:に此処の美味い物を聞く事が出来るからです。
そう言えば、ドナウ河が流れているのと、何時か聞いた事が有ったので、魚の鱒料理はどうか?と聞いた。お勧めだと言う。
鱒とその他のメニューをオーダーして、ビールとワインとボロビチカで宴会が始まった。鱒料理は結構美味い物でした。
:あれっ?糞:も結構酒には強い。ボロビチカをチビチビやって居る。段々全員が酔って来た。
酔えば男同士で出る話は、国が違って居ても同じである。そうです、始めの内は飛行機の事ですが、段々と男達の話はお色気の方へ向いて行くのです。
此処は観光の町です。無い訳が無ーい!「おいおーい、そんなに力を入れて言わなくても良いじゃーん」
「この商売は、どんな時代でも、どんな国でも廃れた事は無ーい!」
「しかし、未成年者が一匹居るんだよー。」
「此処は地の果てチェコだぜー!日本国の治外法権だー!未成年者だろーが何だろーが、誰にも文句は言わせ無ーい!」
酔ってしまった馬鹿者達は、どんどん意気が揚がって行きます。
「ホノルルの:ドドメ氏:の時の様に、上手く行くのかなー?」
「此処のシステムはどう成ってるのかなー?」
「ストリップ:御嬢:が来てウインクすれば、:御嬢:のガードルに紙幣を挟むのかなー?」
「ホノルル以上にスペシャルの時間は長いのかなー?」
「此処の紙幣はホノルルでの:アルマジロ:の様に間違い易いのかなー?」
不安が先に立つのでした。「オットットー!不安が立つ前に、:キャーン玉:をおっ立ってて仕舞いました。」
日本の:下手物:四匹プラス、ドイツの:下手物:一匹は、ほとんどお馬鹿さんに成り切っています。

 :あれっ?糞:の案内で:男の憩いの場所:へ出かけて行きました。
入り口には、此処もホノルルと同じでガードマンが居ました。何処の国にも、これが如何にも用心棒と見える奴が居るものですねー。感心して仕舞います。
店の中に入ったら、此処はストリップバーでは有りませんでした。
一見すると普通の日本の、ミニクラブの様です。
「なーんだ、折角ガードルに挟むチェコ紙幣を用意したのにー。」
薄暗いボックス席に五匹が座った。早速5人のホステスらしき娘達がそれぞれの隣へ座った。
:あれっ?糞:は隣りの娘と何やら話して居ます。他の四匹は、只、只黙り込んで居ます。隣りの娘も黙ったままで困っています。
何を話せば良いのか???「日本語で、お前好きよって、喋ってみっかー?」
「こんな良い娘を目の前にして・・・日本だったらなー」
「聞いた娘は何を言ってるか解んねーだろうなー。」
:四匹:と娘達は、閑を持て余して居ます。
:あれっ?糞:が大将に説明して居ます。大将が他の三匹に通訳です。
此処のシステムは、こう言う事だったのです。もしも、隣りの娘が気に入ったら、此処のマネージャーにペナルティーを払えば、自由恋愛が出来るらしい。
日本を出る前に:狸ちゃん:が、「:あれっ?糞:が:コンドーさん:を沢山連れて来いと言うんだよー。」と話して居ましたが、その謎が解けました。 
俺は、:あれっ?糞:が自分の彼女との行為?の為に、性能の優秀な日本の:コンドウさん:を土産に要求したのかと思っていた。
しかし、ドイツだって結構技術のレベルが高い国なのに、:コンドーさん:だって優秀な筈と思って居た。
「こんな国に来て、エイズを貰って帰れるかー!」全員「ノーサンキュウ!」
期待に胸を弾ませて、とんでも無い予想して出かけたお馬鹿さんな:四匹:は、出かけた時の勢いはどっかへ吹き飛んで、見るも無惨に、意気消沈(キャーン玉も消沈?縮まって?)で帰って来たのでした。 
期待が大きかっただけに、期待に裏切られた結果と言うものは、男心をこんなに撃ち砕くものなのですねー! しんみりー
「枕をお友達に、自棄酒かっ喰らって寝っかー・・・ブー!」
「おい・おーい!大将よー!自棄酒迄は我慢すっけどさー、自棄屁ーってのは勘弁してくんなーい?」
そうなのです、大将と俺はツインの相部屋なのです。大将を交えて何人かで、行動を共にする時は何故か、大将と俺が相部屋に成って仕舞うのです。
「おめーら、そんな関係だつたのかー?」
「一寸待ってー、冗談でもそんな事言わ無いでよー!これでも結構面食いなんだからー!」
「俺もやだよー!」・・・どちらも、どっちもなのでーす!

 帰国の予定が3日後で、アントノフにも乗れないで、「飛行場で時間を潰しても仕方が無い。折角のチェコで時間が有るのだったら、プラハへ観光に行こう」と言う事に成った。
しかし観光地の此処の町でも、レンタカーが無い。この国では、一般庶民に取って車は、高値の花なのです。ソ連邦の崩壊は、此処でも相当影響して居るのです。
それでもチェコは、東欧圏の中では、優等生で、他の東欧諸国よりは遥かに裕福だと言う。
一般庶民が車を持って居ないのに、レンタカーに回す程の余裕が無いのでしょう。
車で移動出来ないのは、身障者の:髭ゴジラ:には相当の苦痛なります。しかし、プラハの魅力は、苦痛よりも優って居ました。電車で行く事に成りました。 がー?言葉も解らず、字も読めず、その上身障者を伴っての旅です。普通人ではビヒって仕舞い、出かけません。
何処までもノー天気でアバウトなお馬鹿さん達:下手物:4匹は、いそいそと、電車の駅へ行きました。
駅の案内看板らしき前に:下手物:4匹が立ったら、周囲の人達にジローリ・・・眺め回されて仕舞いました。余程特異に見えたのでしょうね。
そんな事には、一向にお構いなしの変な:下手物:4匹は、字が読めないので、案内図の前でワイワイガヤガヤなのです。
「流石ー大将、旅慣れてるー!」チケット売場の駅員に英語で話掛けた。此処は光地だったのです。少しは英語が通じたらしいのです。
チケットを買って、訳のわかんない字が書いてある案内図片手に、電車を乗り継いで憧れのプラハに降り立ったのです。
それにしても、度胸が良いと言うか?馬鹿と言うか?怖さ知らずと言うか?見事なバイタリテーと言うか?:下手物:達の行動力と、行動範囲の広さには、驚く物が有ります。
「おい、おーい!サバンナのチーターじゃないんだぜー!俺達ゃー!」
「んー?動物には、変わりねーだろーってがー?」

 どうにか、プラハに到着しました。駅前の広場に立って周囲を見渡し、ヨーロッパの古い威厳の有る景色に感激でした。
中学生の頃、日本の奈良、京都を旅行した時も感激しましたが、此処プラハの洋風建築も素晴らしく、正しく古都・・・和風の素晴らしさ、洋風の素晴らしさどちらも歴史の重みが感じられて感激でした。
何処からか、クラシック音楽が流れて来そうな錯覚に囚われてしまいそうです。
クラシック音楽は好きでは有りませんが、此処に立つと何故か、クラシック音楽が相応しく思えるのは、私だけなのでしょうか?
いつかテレビで見た、ソ連が此処プラハを、戦車で踏みつぶしている光景がダブります。こんな歴史の有る街を、力でねじ伏せるソ連の汚さが、北方領土と同じで腹が立ってしまった。
しかし、何故かこの時は、腹は立ったが:キャーン玉:はおっ立ちませんでした。
「馬っ鹿ー!マジかよー!」
「んーもー!エッチー!」
そうです、エッチな気分で眺める景色では有りません。景色に失礼でーす!
またまた、頭が:ウニって:来ました。
そんなこんなで、「腹減ったー!」・・・しかし:髭ゴジラ:足が痛くて動けまへーん。
「此処から余り遠く無い所に食事が出来そうなー・・・」
有りましたー・・・プラハの広場で懐かしい英語の文字がー・・・「えーっ?マクドナルドだってー!」
「由緒有る、歴史の古都の目立つ場所に、マクドナルドを作るんじゃねー!」
「折角の景観が台無しじゃーん」と言いながら、マクドナルドに入って行くのでした。大見得切っては見ても、空腹には勝てない:下手物:4匹でした。
「しっかしよー、其処迄悪く言ってマクドナルド食うかー?」「日本に帰ったら幾らでも食えんだろー!」
どうでも良いけど、腹が減って食べたのに、スッゴク不味かったー。「一寸位歩いても我慢でビールを飲むんだった。」:髭ゴジラ:はビールにこだわっているのでした。
:下手物:3匹は、:髭ゴジラ:に気を使って、ハンバーグを食べ、記念の写真を撮っただけで、マリアンスクへ帰って来ました。本当に美しい友情溢れた:下手物:4匹でした。

 翌日は土曜日で、土、日曜日がマリアンスクリーゼンの飛行場のオープンデーでした。
飛行場に着くと、スタッフが忙しそうに働いて居ます。ハンガーの中が昨日の内に綺麗に清掃され、機体が増えています。屋外の草原も綺麗に刈り取られて多くの飛行機が並んで居ます。多分、外来機なのでしょう。日曜日が本番で、今日はサブデーだそうです。 
見物人が三々五々集まって来ました。来る人ほとんどが、物珍しく私達:下手物:4匹を見ながら何やら話して行きます。絶対パイロットとは見てくれて無いでしょう。
最近は見られる事に慣れて仕舞って、快感すら憶えます。ついでにポーズを取ります。
「嘘ですよー!」「んもー・・・貴方って信じ易いんだからー!」
10時頃に成ったら、カフェテリアのおっさんが(オーナー)が、自分の女将さんと思し召す、痩せる事を遙か昔に諦めて?忘れて?しまった様に、肉付きの極めて良い、ふっくらスタイルのおばはんと(随分長々しい表現だこと)交代した。
ハンガーに向かって行ったおっさんには、10人程が金魚の糞の様に着いて行った。
程無く全員が古いスタイルのジャンプスーツを着込んで現れた。
日本やアメリカのジャンプスーツの派手派手しか見てない俺には、もっの凄くシンプルで格好良く見えた。
「はつはー、おっさん達ジャンプ(スカイダイビング)のグループで、おっさんがインストラクターだったんだー!」
:あれっ?糞:が、おっさんは戦争中の落下傘兵で、相当のベテランだと説明してくれた。
全員が、3日程前に俺達が乗ったアントノフに乗り込んで行く。
そう言えば、アントノフのキャビンには、10人以上の座席と、天井には洗濯用の紐見たいに、ワイヤーが張って有った。このワイヤーにパラシュートの開傘フックを引っかけて、飛び出すのです。
「ははー、このアントノフはジャンプに使っていたんだー!」
「ゆっくり飛べて、10人も乗れるアントノフは、ジャンプには最高だねー!」
「ランデングポイントも、真っ黄色のタンポポ草原とは、絵になるねー!」
「ため池に、ポチャンすんじゃねーぞー!」
アントノフが草原に向かってタキシングしています。エンジンの音が急に大きくなって50m位走ったら、10人も乗ってるのに浮いてしまった。
そのまま上昇を続けて、見えない程になってしまった。
ビールを飲んでいい気持ちで眺めていたら、今迄カフェテリアの目の前に座っていた、工員風のおっさんが、塗装の薄剥げた、アクロバット用のズリンに乗り込んでエンジンを掛けた。
「なーんだ、あのおっさんパイロットだったんだー!」
エンジンのランナップを終えたら、そのままタキシーウエイとも、ランウエイとも言えない場所からいきなり離陸してしまった。
そのまま反転して来たら、上空でアクロバットを始めた。上手い、上手い!
それ程性能の良い飛行機には見えないし、エンジンの出力も充分とは思え無い:ズリン:で、軽々と連続の演技です。
ロール・ループ・スピン・ハンマーヘッド・ローリングサークル・キューバンエイト・背面ローパス・連続逆ループ・ナイフエッジ・インメルマンターン・・・・
20分程連続です。そのまま着陸、エプロンへ。
降りて来たズリンのコックピットを見て驚き!エンジン計器と高度計とエアースピード計と、Gメーター。コンパスは付いて無い。
シートを見たら4点ベルトでは有ったが、ショルダーハーネスは、自作の様だった。それもチャチな布きれで自分で作った様な代物です。
腕と道具は比例しない事を見せつけられました。パラシュートは付けてませんでした。
ソ連製民間航空の、ターボプロップ双発機が片肺のフルパワーで、スリップしながらの超ローパスを見せてくれました。

 午後からも、色々な飛行機が飛んで見せてくれました。          
明日の本番では、もっと凄い物が見られたかもねー。
夕方迄楽しんで、ホテルへ引き上げて来ました。
マリアンスク最後の晩餐を、明日の帰国の為にそれなりの飲み方で、お開きにしました。

 翌日は、:あれっ?糞:のセスナでマリアンスクの飛行場から、フランクフルトへ、空からの越境をして送って貰いました。
:あれっ?糞:のセスナは、フランクフルトの国際空港には、乗り入れが出来無いので、フランクフルト近郊の小さな空港に着陸した。
其処の空港でドイツへの入国手続きをして、:あれっ?糞:に別れを告げて、タクシーを拾ってフランクフルト市内に行きました。
今晩は、フランクフルトで一泊です。タクシーの運転手に寿司が食える場所に近いホテルをリクエストしたが、此奴も国際空港の警備員と同じく、東南アジアからの出稼ぎだつたのです。
下手な英語で「フランクフルト市内を良く知りません。」
「馬鹿めー、地理を良く知らないなら、タクシードライバーなんかするんじゃねー、お前ー俺達をなめんじゃねえーぞー!こう見えても俺達っちゃー:下手物:集団だぞー!」・・締まんない啖呵を斬ったものでした。
右手を上げて?反省ー!・・・反省:下手物:四匹!
寿司屋が有りそうな場所を,3回程行ったり来たりの末、日本レストランが有る大きなホテルに着きました。レセプションに行きツインの部屋を二つリザーブしたら、OKと言う。
しかし、:下手物:達が泊まる様な雰囲気では無い。でもOKと言った。
正面の壁には、4星マークが有るじゃ:あーりませんかー:高そー・・・しかし、思い過ごしでした。以外と安いのでした。それとも日本のホテルが高過ぎ?なのかもねー!
それにしても、ジーパンによれよれシャツの格好の:下手物:達が泊まる雰囲気のホテルでは有りませんでした。
「なんてたって、4星だもんねー!」
このホテルでも大将と:髭ゴジラが:相部屋になりました。
「またまた変な関係になりそー!」
事の真相は、:狸ちゃん:と:イワンちゃん:が大将を避けたと言う事だったのですがー。
「もしかして、大将の寝屁ーを敬遠したのかもよー!」
「とっ、とっ?言う事は、俺は毒ガスに滅法強いって事かー?」

 部屋に落ち着いて、シャワーを浴びて、ドレスアップ?して、ホテルの一階に降りて行った。
地元で言う:寿司バー:で:下手物:4匹が合流し、日本のビールで寿司を久しぶりに堪能しました。料金は高けー!高けー!・・・幸か不幸か?此処ではカードが使えたのです。
とうとう此処の勘定も:狸ちゃん:の奢りになって仕舞いました。
そうそう、此処の寿司屋の板前が:好き者:だったのです。「久し振りの日本人と、貴方達の:いでたち:(多分、余りにも旅行者らしく無い斬新な?服装)が気に入った。」とか言って、:へらへらと:頼みもし無いのに:男の憩いの場所:を紹介すると言うのです。
「11時になったら店がはねるので、その少し前に、店に顔を出して下さい。自分も久振りなので御一緒します。」と言う。
大将・:下手物:3匹を見る・・・マリアンスクでの:男の憩いの場所:の事が頭の中を駆けめぐる・・・どうやら4人共「ノーサンキュー!」らしい。
大将・適当に相槌を打って居た。当然、:男の憩いの場所:の件はスッポカシです。

 翌日、フランクフルトの空港で又々、大変な:チョンボ:が有りました。
大将が、空港のチェックインカウンターの前で、突然「飛行機のチケットが無い。」と言い出した。
「ホテルの部屋のテレビの上に置いて来た。」と言って、タクシーでホテルへ戻って行った。
出発の時間が迫って来ます。大将は未だ来ない。焦る・焦る。
とうとう、出発には間に合いませんでした。チケットは見つからず、大将が戻って来た。
言う事が良いよ。「何で先に行かなかったのー。」だって。
もしも、伝言を残して俺達だけで先に、アメリカへ帰って居たら、何を言われたか?想像出来ました。
:髭ゴジラ:が「大将一人を残して、俺達だけで行ける訳が無いでしょう。:下手物:たちの絆は、堅いんだよー、友情が大事ー!」だって。よくもトロトロの:よいしょ:を言うなー。
そんな訳で、フランクフルト空港での大将の大:チョンボ:は、一件落着して無事ロスへ戻ったのでした。
「大将も人の子、偶には:チョンボ:もあらーな!」
マリアンスクって街は、本当に落ち着いた、洋風の:ひなびた温泉街:と言う表現が似合う、良い所でした。
それと、プラハの街も深く印象に残りました。もう少し身体が自由になって、他人に迷惑を賭けない程に回復したら、もう一度訪れて、ゆっくりと散策したい街です。

 ドイツは、ほとんど通過だったので、:あれっ?糞:を頼りにして、次回の楽しみとしたいものです。
来年、アントノフが仕上がった時を楽しみに・・・さよならマリアンスク・・・さよならプラハ・・・

 何故、アントノフが零戦の復元に結び付くのか?
零戦の復元に向かって行動しているのに、どうしてアントノフを飛ばそうなんて周り道をしているのか?と思うでしょう。 
それには、訳が有ります。一番の大きな理由は、こんな大きな、時代錯誤の飛行機を日本迄フェリーして、日本の北から西の端迄デモフライトをして、俺達:零戦に魅せられた男達:をPRしたいと言う事だったのです。
ほとんどの日本人は、この飛行機を見た事が無いと思いますが、本当にこれが飛ぶのか?と思う程にインパクトの強い代物です。
普通の人だったら、考えても見ない事でしょう。「馬鹿げてる!」と一笑に附されて仕舞います。
私も、大将とあの:女王様:で太平洋横断をやって居なかったら、こんな話には、乗りませんでした。
こんな計画を立てて、実行しよう等と考え付くのは、大将位でしょう。乏しい資料の中で調査し、出来そうだから立案して、俺に話したのだと思います。
大将だったら出来るし、やる事でしょう。問題は、お金なのです。
零戦を復元するのには、どうしてもお金が必要なのです。そのために、俺達の行動力と、技術力のレベルが高い事を見せないと他人には信用して貰えない。 
私達は、「行動力と技術力は日本人だけで。」と言うこだわりが有ります。
平成8年に日本の空を飛んだ零戦は、企画と経費は日本人でしたが、パイロットとメカニックは米人だったのです。企画したU君がパイロットにしてくれと頼んだそうですが、零戦のオーナーは「絶対日本人には操縦させないし、メカニックも日本人は受け付けない」と言ったそうだ。
信用の無いグループには、スポンサーがつかない。そのためには、古いオンボロ飛行機でも、此処までやれるんだと言う、行動力と技術力の証明をしたいのです。

 アントノフのエンジンは、零戦と似てる星形です。馬力も1000馬力と1200馬力の違いと、シリンダーの配置が単列か副列の違いです。
レシプロ星形エンジン・・・少しはこだわりが有っても良いでしょう。
計画最初の飛行ルートは、シルクロードの上空を日本迄と言う事でした。
しかし、このルートは、中国が許可を出して呉れないだろう事が予想されました。(実際は、或るコネを頼って打診しました。がー駄目でした。)
次の計画ルートは、シベリア鉄道の上空を飛ぼうと言う事に成りました。
どちらも、今まで、誰もやった事が無い筈です。
どちらのルートもロマンを掻き立てるものが有りますが、現在の時点では、実現不可能と思われます。
もしも、中国政府が特別許可を出して呉れれば、事前に燃料の補給が何処と何処で可能か?とか、気象の状態は何時の季節がよいのか?とかを調査してからになりますが・・・やっては見たい第一の候補です。
 次のシベリア鉄道のルートですが、マリアンスクの飛行場で、この国のパイロットでロシアを度々飛んで居ると言う奴が居て、行けない事は無いと言って居た。 しかし、ロシアの国内を飛行する場合は、ロシア政府公認のロシア人のナビゲーターを連れて飛ばなければならないらしい。                しかも途中、政情不安で、治安が悪く、強盗が出没するらしい。
それと途中で燃料の補給は、今のロシアでは不可能だろうとの事でした。発電用の燃料が無い国ですから、飛行機用の燃料等手に入る訳が有りません。
現在は、どうゆうルートになるか決まって居ませんが、飛行機は飛べる状態に仕上がっています。
 以上が、問題の飛行機アントノフが零戦に関わって居る理由なのです。


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