零戦の復元に向かって

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1993年 仙台空港に眠っていた双発機、クイーンエアを100万円で購入し、南太平洋の島々を巡りながら、カリフォルニアまで運んだ実話です。翌年BS放送でオシコシの航空ショーが放映されましたが、そこで桂ぶんちんがレポートしていた機体です。現在カリフォルニア・チノ飛行場にあります。おもしろおかしく、楽しく読める本ですので、ぜひご一読ください。

1998年3月20日第1刷
著書 佐藤 亨
発行 (株)日本図書刊行会
発売 (株)近代文芸社
定価 本体1800円+税

本が手に入らないとのご質問がありますので、佐藤氏のご好意により全文公開します。(2000/9/25)

 零戦に魅せられた男達 (大将プラスその他の人達・数名)

はじめに

  私が、この事を書くきっかけになったのは、ある男との出会いが有ってからなのです。
それは、タイトルにも有る様に、:零戦に魅せられた男達:の頂点の男・・・柳田一昭氏だったのです。
今までも、零戦を復元してきた人や、現在も復元に向かっている人も日本国内だけでも、何人かは居ります。 
私が知っているだけでも、原田と言う人、プロジェクトテイクオフと言うグループ(大相撲の力士だった、鞍馬関の遺志で設立と聞いている)。あまり世間には知られていないが、宮崎県の延岡市で、一人でこつこつと取り組んでいる甲斐氏。(彼が復元している現場を見せて頂き、写真まで撮らせていただきました。その時立ち会って頂いた、彼のお母さんに話を聴き、彼のファイトには、頭が下がりました。)
その他。

 私は、子供の頃から零戦に関する知識は、ある程度ありました。それは、飛行機が好きで模型をかなり作っていましたので、子供心にも日本が世界に誇る傑作機・零戦には相当のめり込んでいました。飛行機の好きな日本人だったら一度は憧れる飛行機だった事と思います。
それと、私の父親の友人に零戦のパイロットの生き残りの人が居まして(田中さんといいます。現在は、第一線をリタイアして、自分の趣味の一つの郷土史の研究に没頭しています。私の父が日本刀の鑑定と研磨士の仕事を趣味でやっている関係で、それなりの親しい付き合いを保っています。)つい、先日も 柳田氏が日本に来た時に、田中氏の知っている事を聞かせて頂いて、少しでも参考にしようと思い、忙しい時間を割いて頂いて、貴重な話を伺ってきました。
その、田中氏が家に来るたびに、私は零戦の話をせがんで聞かせて頂いていたのです。
実戦での、生々しい話が、かなり出てきました。その話の中に、時々顔を曇らせながらの話も有り、今思うと田中氏には、つらい事だったと想像出来ます。

 いくら、性能の優れた飛行機であっても、使いこなす技術と知識がついて行けない事とか、取り組み方の弱さとか、これが直接死につながる事等、実際に逢った事を聞かせて頂き、今の自分にとっても参考になる事と、反省する材料が沢山ありました。
その他にも、当時の日本では絶対に言葉には出せないような事等・・・例えば、日本が好き好んで戦争に突入したのではなく、少資源の日本が、連合国の諸国からの、経済制裁で、窮地に追い込まれ、止むにやまれず戦争に突入した 事等、軍部の上層部の殆どの人は、戦争になれば、結果は相当悲惨になる事は 解っていた事、等々です。例えば、戦争が長引けば、資源の少ない日本は物資 の供給が続かなくなり、絶対に負けてしまう事です。

  私は、何時か自分の手で操縦して、自分の飛行機を飛ばして見たい、とのこだわりを、ずーっと持っていました。しかし、私が、念願叶って、実際に日本の空を、自分の飛行機で飛べる様になっても、憧れの零戦に関わり合う事など思いもしませんでした。
しかし、この事を書くチャンスを頂いたので、誇りをもって書き上げる積もりです。
零戦を復元すると言っても、言うのは簡単でも、実際に関わって見ると、途轍もなく大変な事が解りました。

 第一の問題は、経済的な問題です。資料を集めるとか、知識を培うと言う事は、メンバーのそれぞれの人達が、それぞれに努力すればどうにかなりますが・・・(集まったメンバーの人柄によりますが?)
具体的に、幾らくらいの金額が必要かと言う事は、解りません。多分億単位の金額になるでしょう。
例えば、平成8年に零戦の:栄:のエンジンを一台、マレーラップと言う島から買い取って、アメリカの柳田氏のハンガーに運んだ時でも、現地の調査、現地の酋長その他への支払い、国の役人への支払い(殆どが賄賂です、向こうの国では当たり前の事です。)、搬出機材の調達と現地への輸送費、マジェロか らマレーラップ迄の往復の船のチャーター料、マジェロからの輸出の手数料と アメリカ迄の運賃、それに私達の交通費と滞在費、その他諸々を計算すると、 日本円で大凡300万円位かかりました。
:栄:のエンジンは、アメリカの柳田氏のハンガー(飛行機の格納庫)で、完全に分解されたとの事です。
エンジンを復元するとしても、使える部品は殆どありません。分解したパーツの一つ一つを雛形にして、図面を書き、加工し、全てのパーツが揃ったら組み上げて、規格通りの性能が出るかどうか?をベンチテストをします。

 これだけでも、時間とお金が相当掛かる事が、予想されます。
私の言いたい事は、これを読んで頂いて居る皆さんに、零戦の復元に関わっている、こんなグループが有ると言う事を知って頂く事と、私達の趣旨を御理解頂いて、経済的援助を含めて、私達のグループにご賛同出来る方を期待致して居ります。


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